ゴッホ作品《ドービニーの庭》とは?魅力と3つの鑑賞ポイント

ゴッホ作品の《ドービニーの庭》は、草花が生い茂る初夏の庭を描いた絵画です。画面から溢れ出すかのような明るい緑と、漂う静けさが心に残る一枚ですね。

ゴッホ作品《ドービニーの庭》をより深く味わうために、「ゴッホが敬愛した風景画家・全部で3作品・違いは黒猫」という3つのポイントで、作品を見てみましょう。

ゴッホ作品「ドービニーの庭」とは?

《ドービニーの庭》は、ゴッホ最晩年の作品です。オーヴェールの住まいの近くにあった、風景画家ドービニーの邸宅の庭を描きました。

この数週間後、ゴッホは37歳の人生に幕を落とします。そんなことは微塵も感じさせない、明るさと静けさ。この絵には、卓越した美しさがあるように思えてなりません。

《ドービニーの庭》といえば、日本の「ひろしま美術館」に展示されていることでも有名ですね。

《ドービニーの庭》をもっと愉しむ3つのポイント

ゴッホ作品の《ドービニーの庭》を愉しむために、知っておきたいポイントを3つ紹介します。

ポイント(1)ゴッホが敬愛した風景画家

ドービニー(シャルル・フランソワ・ドービニー/1817-1878)は、ゴッホが敬愛した風景画家です。

ドービニーは、いわゆる“バルビゾン派”で、身近な自然と向き合い、その純粋な美しさを描きました。そのスタイルは、後の印象派にも影響を与えています。

アトリエにこもって絵を描くよりも、外で描くことを好みました。そんなドービニーが惹かれていたのが水辺の風景です。

シャルル・フランソワ・ドービニー《セーヌ川の川岸》1855年 南オーストラリア美術館蔵

この《セーヌ川の川岸》を見ていると、とても穏やかな気持ちになります。水面に写る木々の影、水音が聞こえてきそうな静かな風景……。自然と水に気持ちが向かいます。

ドービニーは、船で旅をしながら川辺の風景を描いたのだとか。そんなドービニーについた別名は「水の画家」でした。船がアトリエ代わりとは、とても風流ですね。

ポイント(2)《ドービニーの庭》は合計3作品

《ドービニーの庭》というタイトルのゴッホ作品は、3枚あることをご存じでしょうか?

3枚ある《ドービニーの庭》のうち、最初に描かれたのがこちら。現在ファン・ゴッホ美術館が所有している、正方形の作品です。

フィンセント・ファン・ゴッホ《ドービニーの庭》1890年 ファン・ゴッホ美術館蔵

この作品は、庭の一部を描いたもの。この絵を描き、その後に庭全体を描いたのですね。続いて描いたのが、スイスのバーゼル市立美術館に展示されている《ドービニーの庭》です。

フィンセント・ファン・ゴッホ《ドービニーの庭》1890年 バーゼル市立美術館蔵

そして、ひろしま美術館にも、構図も大きさもほぼ同じ《ドービニーの庭》があります。3枚もあるとは、よほどゴッホがドービニーの庭に惹かれていたのでしょう。

ポイント(3)違いは“黒猫”

バーゼル市立美術館の《ドービニーの庭》」と、ひろしま美術館の《ドービニーの庭》。よく言われるのが、「本当によく似ている!」ということ。正直ぱっと見ただけでは、まったく違いが分かりません。

でも実は、とても分かりやすい違いがあります。見分けるポイントは、

  • バーゼル版・・・・・・・黒猫あり
  • ひろしま版・・・・・・・黒猫なし

なんです。バーゼル版は、画面左下を黒猫が横切っています。ところがひろしま版には、黒猫がいないのです。

黒猫が消えているのは、なぜでしょうか?長らく疑問とされていました。ところが2008年、専門家の研究によって問題は解決します。科学的調査によって「黒猫が塗りつぶされている」ことが判明したのです。

突き止めたのは、吉備国際大学大学院の下山進教授でした。

(参考)下山進「ゴッホ《ドービニーの庭》に隠されていた“黒猫”の発見」

黒猫を塗りつぶしたのは、画家であり美術品収集家、そしてゴッホの友人でもあったクロード・エミール・シェフネッケルだと言われています。

シェフネッケルは、後期印象派の画家ゴーギャンとも親交がありました。ゴーギャンが描いた《シュフネッケルの家族》という作品に、シェフネッケルが登場しています。


ポール・ゴーギャン《シュフネッケルの家族》1889 オルセー美術館蔵

もしシェフネッケルが塗りつぶした当事者としたら、なぜでしょうか?もっとも有力な説は「絵画の価値を上げるため」という説です。

ゴッホ亡き後、《ドービニーの庭》は遺作展で販売されることになりました。生前売れたゴッホの絵は、たったの一枚……というのは有名な話ですね。

シェフネッケルは、なんとか絵を売ってあげたかったのでしょう。「黒猫がこの絵にそぐわない」と判断して、塗りつぶしたのだと考えられています。そこに“友情”があると思うと、黒猫の存在を見るのも感慨深くなりますね。

まとめ

《ドービニーの庭》を描いたおよそ2週間後、ゴッホは自らの命を絶ちました。わずか37年という短さ。もっと名作が生まれただろうにと思うと、残念でなりません。

でもゴッホは、敬愛するドービニーが住み、草花を愛でたであろう庭で、絵を描くことができました。きっとゴッホにとって幸せなひとときだったはず……と思うと、この絵がますます美しく感じられます。

スポンサーリンク
レスポンシブ広告(1)ゴッホ
レスポンシブ広告(1)ゴッホ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
レスポンシブ広告(1)ゴッホ