ゴッホ作品《アルルの跳ね橋》とは?魅力と3つの鑑賞ポイント

ゴッホ作品の《アルルの跳ね橋》は、南仏アルルの運河に架かる橋を描いた風景画です。ゴッホは跳ね橋を見て、故郷オランダを懐かしんだのでしょう。趣きの異なる5作品が残っています。

ゴッホ作品《アルルの跳ね橋》をより深く味わうために、「全部で5作・浮世絵への憧れ・復元された跳ね橋」という3つのポイントで、作品を見てみましょう。

ゴッホ作品《アルルの跳ね橋》とは?

《アルルの跳ね橋》は、ゴッホのアルル時代の作品です。ゴッホは地元で「ラングロワ橋」と呼ばれた跳ね橋を愛し、数多くの絵を描きました。

描かれているのは、のどかな春の空と川。跳ね橋の上を渡っていく幌馬車や、川で洗濯をする女性たち。いわば、何気ない日常です。

でもゴッホにとっては、そんな暮らしの風景こそが、何よりの救いだったのかもしれません。

ましてや大雪が溶けてからのこと。恋焦がれた土地アルル。春を迎え、美しい大地と出会えた喜びが、じわりじわりと伝わってくる気がします。

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《アルルの跳ね橋》をもっと愉しむ3つのポイント

ゴッホ作品の《アルルの跳ね橋》を愉しむために、知っておきたいポイントを3つ紹介します。

ポイント(1)全部で5作

ゴッホは、アルルの跳ね橋にとても惹かれました。実は描いた作品は1点だけではありません。繰り返しアルルの跳ね橋を描きました。現在では5作が知られています。

アルルの跳ね橋(1)アルルのラングロワ橋と洗濯する女性たち

もっとも有名な《アルルの跳ね橋》がこちら。クレラー・ミュラー美術館が所蔵する作品です。

フィンセント・ファン・ゴッホ《アルルのラングロワ橋と洗濯する女性たち》1888年 クレラー・ミュラー美術館蔵

空と川は透き通った青。橋や土手、草は明るい黄色。透明感のある青と黄色の対比が、とてもきれいです。きっとゴッホ自身が、色彩の美しさに見とれながら描いたのですね。

川に広がる波紋も、とても繊細で柔らかです。耳を澄ますと、静かな水音が聴こえてきそうな気がしませんか?

アルルの跳ね橋(2)アルルの跳ね橋

ゴッホは《アルルのラングロワ橋と洗濯する女性たち》とほぼ同じ構図の絵も描いています。


フィンセント・ファン・ゴッホ《アルルの跳ね橋》1888年 個人蔵

色調が落ち着いた一枚ですね。よく見ると、構図も登場人物もほぼ同じ。でも色彩が違うことで、こんなにも印象が違うとは驚きです。

ゴッホは弟テオへの手紙で、こんな文章を残しています。

小さな馬車が通っている跳橋で、青い空にその側面が浮かんでいてーーおなじように青い川と、草がオレンジ色の土手にキャラコを着たいろんな色の帽子をかぶった洗濯女がかたまっているところだ。それからもう一枚の風景も、やっぱり小さな素朴な橋と洗濯女だ。

(引用)1961年 岩波文庫 ヴィンセント・ファン・ゴッホ著、ボンゲル編、硲伊之助訳『ゴッホの手紙(中)テオドル宛』33Pより

この文章の中に、たくさんの色が出てきます。青い空、青い川、オレンジ色の草……。ゴッホがいかに色彩を大事にしているかが分かります。

そして気になったのが“キャラコ”という言葉。一体何でしょうか?

調べてみると、キャラコとは「薄くてつやがある、目のつんだ白木綿地(もめんじ)」のこと。日本では足袋(たび)に使われていた素材です。

木綿の白と、帽子のいろいろな色。そのカラフルな色彩にも、ゴッホは興味をもったのでしょう。

アルルの跳ね橋(3)アルルの跳ね橋

ゴッホは、アルルの跳ね橋を主役に、日傘をさす女性が橋を渡る絵も描いています。

フィンセント・ファン・ゴッホ《アルルの跳ね橋》1888年 ヴァルラフ・リヒャルツ美術館蔵

先ほどの2枚とは、反対の川岸から描いた一枚です。登場人物は女性一人だけ。のどかさの中に優雅な空気が流れる、とても印象的な一枚です。

アルルの跳ね橋(4)アルルのラングロワ橋と運河沿いの道

運河沿いの道を大きく描いた作品もあります。こちらはファン・ゴッホ美術館所蔵です。

フィンセント・ファン・ゴッホ《アルルのラングロワ橋と運河沿いの道》1888年 ファン・ゴッホ美術館蔵 

これまでの作品と同じ場所です。構図や色彩が変わると、こうも印象が変わるのですね!

アルルの跳ね橋(5)アルルの跳ね橋

ゴッホは油絵だけではなく、水彩画の《アルルの跳ね橋》も描きました。

フィンセント・ファン・ゴッホ《アルルの跳ね橋》1888年 個人蔵 

黄色ではなくオレンジ色。一つひとつの要素に存在感があり、迫力のある一枚です。

ポイント(2)浮世絵への憧れ

ゴッホ作品の「アルルの跳ね橋」は、浮世絵への憧れが感じられる絵画です。

ゴッホ《アルルの跳ね橋》は、モデルする絵画があったと言われています。それは、歌川広重の浮世絵《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》です。

歌川広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》

青い空と川の水、シンプルな造形の跳ね橋。こうした題材は、ゴッホにとって格好の題材だったのでしょう。

ゴッホと浮世絵の関係については、別記事で紹介しています。ぜひご覧くださいね。

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ポイント(3)復元された跳ね橋

ゴッホが描いたアルルの跳ね橋は、残念ながら現存していません。ところが同じ場所に、新しい跳ね橋が架けられています。

復元したものではありますが、ゴッホが《アルルの跳ね橋》を描くために通った場所は、ここでした。

跳ね橋といえば、有名な国はオランダです。ゴッホは跳ね橋を見て、生まれ故郷のオランダを思い出し、懐かしんだと言われています。

オランダといえば真っ先に連想するのは、チューリップや風車でしょうか?もう一つオランダを特徴づけるのが、「海面より低い土地が多い」ということです。

オランダは、干拓によって土地を広げました。運河を作り、船が行き来できるように、たくさんの跳ね橋が作られたのです。

跳ね橋を見て育ったであろうゴッホ。きっと南仏アルルの地で跳ね橋を見て、郷愁を感じたのでしょうね。

まとめ

ゴッホの代表作《アルルの跳ね橋》は、5枚もの絵が存在します。美しい絵画の数々から、ゴッホがいかに惚れ込んでいたかが伝わります。

ゴッホにとってようやくたどり着いた、運命の土地アルル。そこで繰り返し描いたのが、祖国オランダを想わせる跳ね橋でした。“人間ゴッホ”を感じると、作品がますます愛しくなりますね。

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